ジュネーブ市の中心街からは少し離れた、住宅街の一角にある、小さな4部屋のホスピス Fondation La Maison de Tara 和訳をすると タラの家。
手入れの行き届いた、古いどっしりとした家具、歩くと少し軋む木の床、花瓶に活けられた季節の花、静かな部屋、心を込めて準備される食事、大きな庭と鳥たちのさえずり…。
菩薩の名を取ったホスピス
タラの名の由来は、チベット仏教の菩薩のひとつ、“この世からあの世へ渡るのを助ける者” とのこと。“タラをする” という表現には、亡骸を浄めるという意味があるそう。
わたしはここで、ケアコーディネーションナースとして勤務させていただいている。
タラの家の役割
人生の最期を、自宅のような心が落ち着く場所で、患者さんにも家族にも、安心して快適に過ごしてほしい~~ その願いから創立されて9年、ホスピスとして、社会に貢献するボランティア養成機関として、二つの役割をもって機能している。
タラの家のスタッフ構成
常勤のスタッフは8人居るが、なんといっても、主力は、150名を数えるボランティアさん、この人達無くしては、タラの家は稼働できないのである。
老若男女、職業も実に様々な、一年間の100時間に及ぶ養成を受けた精鋭部隊であり、何年もの経験で、更に磨きがかかっているボランティアさん達も多い。
養成プログラムは、なにかの”仕方“や知識よりもはるかに、個々人の”あり方“を見つめることに重点が置かれ、マインドフルネスによる終末期ケアを推奨する。
平均すると患者さんの滞在期間は4ー5週間、だから、出会いと別れの繰り返しである。
ひとつ、またひとつ、思い出に刻まれていく、出会いと別れ。
施設勤務時代とタラの家の違い
全く規模が違う、大きな施設で働いていた頃とは打って変わって、仕事をする中で、時間をかけて一人一人と関われることは、看護師として幸運であるとしか言いようがない。患者さん、ご家族ご友人、そしてボランティアさん達とも。
これから時々、タラの家での私の経験と想いを、このコーナーでシェアしていきたいと思う。