神田駅付近のホテルでの入国後自主隔離生活
東京は神田駅付近のホテルでの入国後自主隔離生活も、あと残すところ4日になった。
終わりが見えてきて、今日あたりは気持ちが少しゆったりしてきたが、隔離8日目頃は、最悪だった気がする。
この尋常ならぬ体験にどっぷり浸かっているうちに、この生活を強いられている人々が、どのように体験しているのかを広められる機会になったらと思い、書いてみることにした。
今日の時点で、すでにヨーロッパでは、コロナパスポートの利用がどんどん進んでいて、例えば、入国者に対する隔離は、大幅に取りやめになっているのが現状である。だから日本政府が長い自主隔離に固執することに、ワクチン接種を済ませている私が辟易しているのを、皆さんにわかってもらいたい。
年老いてきた両親とともに過ごす時間
今回の帰国は、年老いてきた両親とともに過ごす時間を持ちたいと思ったのと、いざという時のために、市役所で在宅看護を担当する方と、会っておきたかったから。
母は、そんなに無理して帰ってこないで、コロナが終わってから来れば?などと、呑気に言っていたが、本当にコロナが終わるのを待っていたら、両親は亡き人となってしまう。
ちなみに私の帰省先は、道東オホーツク海沿岸の小さな街である。
帰国を計画する時から、私は憤っていた。
理由は、東京での14日間の自主隔離が避けられないとわかったからだ。
行き先が本州ならもちろん、四国でも九州でも、空港から車に乗って移動できるが(もちろん場所によっては、かなりの時間がかかるけれど…)、北海道へはどうやっても、公共交通機関を使わないでは行き着けないのである。
「なんて不公平なの‼︎ これじゃまるで、北海道に行くあなたが悪いと言われているようなもの!なぜ、札幌からも入国できるように配慮されなかったのか?」
自主隔離中でも、すでに実家で生活できるのと、ホテルで無為に2週間も過ごすのとでは、無論雲泥の差がある。日本政府のやり方を、呪った!
もちろん、ホテル住まいにかかる金額もバカにならない(主人は、この費用、日本政府が払ってくれるの?と、本気で私に聞いてきた)。
里帰りという、誰もがやってしかるべきことを実現するために、これほど行き先によって差が出るのは、とても受け入れがたいのである。
とは言え、不満を撒き散らしているだけでは、日本行きの飛行機に乗ることができないので、ジュネーヴにて数々の準備を済ませ、いざ出発。
成田で、変な理由で入国拒否されないかどうか、ドキドキしながら…
成田空港に着いてからの2時間
あれだけガラガラに空いた飛行機に乗った体験もなかったが、成田空港に着いてからの2時間は、信じられない、としか言いようのないものだった。
まるでベルトコンベアーに乗せられた商品が、合格商標をもらって世に出て行くかのような感覚!
用意してきた書類は、何十回とチェックされ、フライト疲れでぼーっとした脳には過酷な、明日からの山ほどの指示を受け…。
たかが50名ほどの乗客に携わるスタッフは、軽く数えても150名…?
おかげさまで、迷ったりする心配はなくていいのだが、この、いつ終わるとも知れない行程に、流石に驚いた。
私は位置確認のアプリの説明をされた時に、この女性に聞いてみた、「この住所の周辺にいないといけないということは、どのくらいの距離なら離れていいのですか?」と。彼女の返答は「それは次のゲートで聞いてください」と、あっさり。
この時、正直腹が立った。“あなたは14日間このように監視されるんですよ“、という説明を私にしながら、まるで責任感のかけらもない返答。
不満や疑問が存在する余地はゼロ。
ただの流れ作業、そこに、人間味は一切無い、と思った。
PCRは無事陰性、晴れてベルトコンベアーから解放されて、お迎えのハイヤーに乗り込み東京へ。話好きな運転手さんとおしゃべりする間に、あっという間に着いてしまった。
窓から見えるのは、ビルの裏側
何も大きな期待はしていなかったが、チェックインを済ませて部屋に入るなり愕然。
「この小さな空間に14日間もいるの…?」窓から見えるのは、ビルの裏側。
首都高速から30mくらいしか離れていないから、騒音もすごい。
静かなジュネーヴの田舎に住んでいる身には、この、絶え間ない車の音が苦痛になるのは明白だった。
隔離中の外出に関しては、最初から疑問があった。
厚生省からの指示は、“不要不急の用事以外、外には出ないように”、
しかしホテルからは、“出来るだけお部屋でお過ごしください”、それに普通のお客様だっているのである。ましてや私の顔に、自主隔離客と書いてあるわけでもない。出ていったところで、何も言われない。明らかにギャップがある。
大きな声では言えないが、そこそこ外出できてしまうのである。
さすが、本音と建て前の国、日本!
ここまでやっていても、外見を整えているに過ぎないというのが、現実のように思える。なら、いっそのことやらなきゃいいのに…
スマートフォンを通して行われる位置確認は一日に3回、そのうち一回は、アプリによるビデオ通話で、だいたい時間帯が決まっているのが、数日でわかった。その他2回の位置確認の時間帯にばらつきはあるけれども、それを避ければ、(⚠️罪悪感を抱きながら) 出歩くこともできる。
もちろん、交通機関や三密は絶対に避けて。
また、正直言って、そうでもしないと気が狂ってしまいそうになる。
私の場合は、ウオーキングを朝5:30から7:00頃まで、あとは午後に一回、コンビニや近くのレストランなどに夕食を調達しに行く生活。
とにかくしっかり眠れない
誰に気兼ねするでもなく、気楽と言えば気楽なこの生活〜読書、映画鑑賞に、ヨガや体操、そして昼寝〜しかし身体への影響は、個人によると思うが、なかなか大きい。
運動不足と日光不足の相乗効果で、とにかくしっかり眠れない。夜眠れないから、時差ぼけが延々と続く。食生活の質が低下して、便秘解消に薬を飲む羽目になり、言葉を交わす相手は、断然減ってコンビニのお兄さんくらい…閉塞感がいっぱいのこの部屋で、家族や友人とのメッセージのやりとりができるのが、せめてもの救い…
これじゃ、健康に自信がある人でも、病気になりかねない、というのが、私の正直な感想である。
14日間は、いくらなんでも長すぎる。意味がない。
スイスなら、コロナに罹患しても隔離は基本10日間、感染力もなくなるから、症状がなければ外出が許可になるのに…
そもそも、入国時にPCR検査が陰性だった場合と、陽性だった場合で、隔離日数が同じというのも、全く理にかなっていないし。
疑問だらけの自主隔離生活、早くしなくていい日がやってくるといい、と、心から願う。
これが、極端になにかを怖がり、用心深くなる要因の一つなのかも知れない
とあるYoutubeの動画で、欧米人と日本人のセロトニン〜幸福感や楽観性を決定する〜の質を比較していたものを最近聞いた。
大部分の日本人はこのホルモンの質が欧米人と違うせいで、物事を悲観的に見る、明らかな傾向があるそう。
これが、極端になにかを怖がり、用心深くなる要因の一つなのかも知れない。が、こんなことを続けていたら、日本は、世界中から相手にされなくなる日が来るかも知れない…なんて思うのである。